合理性と好奇心

 鞄という道具は前提として合理的でなければならない。人が移動し目的を満たすため、必要な道具を収納することに存在理由がある。その目的によって鞄の形、ポケットの数、大きさ、持ち方、細かな仕様などが決まってくる。もちろん素材も、鞄の大きな構成要素の一つだ。鞄は必要とされる機能(目的)によって形態・素材が決定される。それはまさに、アメリカの建築家ルイス・サリヴァンが残した言葉「Form  follows function(形態は機能に従う)」にも通ずるものである。


 また、鞄は人の生活に近い道具でもある。ダレスバッグは医者が往診で使用されていることからドクターバッグと呼ばれていたように。メゾンブランドの鞄を持つ人はそのステイタス性を表すように。鞄は服と同様に、持つ人を現わすツールとなっている


 

人の可能性はいつまでも無限大だ。だが人は大人になり、知識も経験も備えるにつれて、童心の時のような心の底からワクワクするようなた気持ちを抱くことが少なくなっていく。そしていつからか枠に収まる大人になり、可能性を閉じることになる。好奇心は人に新たな可能性を生み出してくれる。子供のころ、世界が見えない自分は何もかもが新しい発見だった。自分を信じていた。未知に対する好奇心、そしてそれに挑んだ自分が新たな自分を作り上げていった。


WONDER BAGGAGEは鞄の持つ合理的機能面は備えながらも、持つ人が新しい自分を生み出すための相棒となる鞄でありたいと願う。これからの人生を共に歩み、共に年を重ね、味わいを重ねるていく。そして振り返ったときに蓄積された思い出。自分という存在を確認できる道具として意味を示すような鞄でありたい。

国産である意味

 私達の開発は、使う人の目的を見つめ続け、そこから見える必要な要素を抽出。コモディティ化ではないデザインとは何かを考える。そして素材、パーツに徹底的にこだわり、パターン設計はミリ単位での調整を繰り返し、何度も試作を重ねていく。わずかなニュアンスを伝え、思い描く形を実現する、いわゆるミース・ファン・デル・ローエの言う「God is in the details.(神は細部に宿る)」を体現するには、自分たちが暮らす日本でものを作り続ける必要がある。

 WONDER BAGGAGEは鞄の持つ合理性に加え、使い込むことによって生まれる、鞄と人との距離、愛着といった見えない価値も兼ね備えた鞄を生み出すことを目指している。そのためにできることは全て行おうと考えている。